当クリニックの治療方針

できるだけ自然に!(ステップアップ治療)

経済的にも身体的にも少しでもみなさんの負担を軽くするため、できるだけ自然に近い妊娠を目指しています。このように妊娠へのプロセスに医療が介入する度合いの低い方法から段階的に試していく治療の進め方を、ステップアップ治療といいます。

当院でも、このステップアップ治療をとり入れていますが、不妊原因や奥様の年齢、ご夫婦の希望によっては、その限りではありません。みなさんが不妊治療のベルトコンベアに乗せられているような気持ちにならないよう、十分な対話を持ち、ご夫婦の納得のもとに治療を進めていくことを大切に考えています。

STEP1/タイミング指導

不妊原因や奥様の年齢、ご夫婦に希望などにもよりますが、通常はタイミング指導(超音波検査を行って卵胞の成長の様子から正確に排卵時期を予測して夫婦生活のタイミングを指導する方法)からスタート。6周期程度試して結果でない場合は、AIH(人工授精)へと進みます。

STEP2/AIH(人工授精)

軽い乏精子症などの場合は、ここからスタートすることも。人工という言葉の響きから体外受精と混同されることが多いのですが、こちらは排卵時期に合わせて確実に精子を女性の子宮内に送り込んでおこうという単純明快な発想の、かなり古くから行われている治療法です。ご主人に採取してもらった精液を洗浄して雑菌を取り除き、元気な精子を選別して直接子宮内に注入(IUI)。まさに“授精”という字が表す通り、精子を医療の手で授け、自然なプロセスでの受精、着床を期待するものです。この方法で妊娠するケースの約8割が6回目までに結果が出ていることから、約6回をメドに次のステップを考慮します。

STEP3/体外受精や顕微授精などのART(生殖補助技術)

体外受精(IVF)は、卵管性不妊やAIHでは難しそうなレベルの男性不妊、奥様に抗精子抗体があるケース、それまでの治療方法では妊娠しなかったケースなどが対象になります。体外に取り出した卵子と精子を一緒にすることでできた受精卵(胚)を、そのまま体外で培養し、最も良好だと思われる胚1、2個を厳選して子宮内に移植し、自然なプロセスでの着床を期待する方法。
顕微授精(ICSI)は、体外に取り出した卵子に直接精子1個を注入し、受精を促す方法で、それ以外の行程は体外受精と同じです。より深刻な男性不妊の場合や女性が高齢で受精障害のリスクが高そうな場合に用いられます。
これらの方法で妊娠したケースの約8割が、体外受精の場合は4回目までに、顕微授精の場合は5回目までに結果がでていることから、この数字をチャレンジ回数の目安として考えることもできます。もちろん残る2割の方は、これ以上試したからこそ妊娠された訳ですから、どうとらえるかはご夫婦の価値観次第でしょう。

体外受精は、最後の手段ではありません

体外受精や顕微授精をすすめられると、「ついに、最後の治療段階までのぼりつめてしまった。これでもしもできなかったら、後はないんだ……」というような思いにとらわれる方も多いことでしょう。でも、それは間違いなのです。

確かに体外受精と顕微授精は、ART(生殖補助技術)と呼ばれる高度な技術を用いており、ステップアップ治療の中では医療の介入度が最も高い治療段階です。でも、決して最終手段ではないのです。

たとえば、排卵誘発剤で卵巣刺激を行った体外受精がうまくいかなかった場合には、次の体外受精までの間、2周期(約2カ月)程度、卵巣をお休みさせなくてはいけません。この間は、卵管の通過性に問題がない方であれば、AIH(人工授精)を行ったり、精神的に疲れたご様子のときは「気分転換に、ご夫婦で旅行でもいかがですか?」などとすすめたりしています。その結果、見事に妊娠されるケースも珍しくはありません。とくに比較的高齢の方の卵子は老化によって質が落ちていることが多いので、体外に取り出されることで受けるダメージも大きく、自然妊娠をねらったほうが中にはうまくいくケースもあるということでしょう。

つまりステップアップ治療は、いくらでもUターン可能なのです。