「着床の窓」の有用性
前回、着床不全原因の1つである「着床の窓」を紹介しました。今回は、その「着床の窓」の検査(ERA)の有用性を証明した論文の紹介をしたいと思います。
多施設での着床の窓を考慮した胚移植におけるrandomized controlled trial
この論文は多施設での計458人を対象とした研究です。
PET群(ERA結果に沿った着床の窓で凍結融解胚移植した群)
FET群(ERAは行わずに、プロゲステロン投与からおよそ120hで凍結融解胚移植した群)
fET群(fresh ET=新鮮胚移植した群)
の3群に分けて、胚移植の成績を比較しました。
妊娠率は、PET群 vs FET群 vs fET群―(72.5% vs 54.3% vs 58.5%)とPET群が高かった。
累積出産率は、PET群 vs FET群 vs fET群―(71.2% vs 55.4% vs 48.9%)とPET群が高かった。
その他にも様々な角度で比較していますが、全ての比較において、FET群(ERA結果に沿った着床の窓で凍結融解胚移植した群)が有意差をもって、もしくは有意な傾向を示して、良好な成績となっています。
着床の窓の検査のタイミングは?
これは一定の正解がなく、とても難しい問題です。
前回、「当院では良好胚が2-4回連続で妊娠反応陰性の際に、着床の窓の検査を推奨することがあります」と紹介しましたが、これは「このような状況になれば着床の窓がずれている可能性がそれなりに高くなり、治療経過的にも検査意義・検査費用を患者さん自身も納得できるだろう」という私見に基づくものです。
上記の論文の様に、着床の窓を検査することで成績上がるなら、良好胚を移植する前に検査したい(先にERAをすれば良好胚を失わずに済むのでは?)という考え方もあるかもしれません。一方で、検査しなくても妊娠する人はいくらでもいて、検査結果正常の可能性もある訳です。となると、いつ検査するかは、どれくらい先回りしたいかの希望によります。
そのため、私は初回の移植が陰性だった場合(もしくは良好胚が1つしか採れなかった場合)は、着床の窓も含めた全ての検査を紹介するようにしています。