保険診療の採卵 ② / ⑥
この記事では、保険診療の採卵に関する制限(自費診療との併用が出来ないという点で)について書いていきます。
細かい治療内容にも規定あり
(少し専門的な話になりますが)当院の卵巣刺激は比較的高刺激で行い、卵子最終成熟にはWトリガーを頻用していました。2022年1月3月に新しく大手不妊クリニックから2人の胚培養士を迎えておりますが、両人ともに当院の成熟卵率・採卵回収率の高さに驚いております(お世辞も多少はあると思いますが)。
・注射製剤の制限により回収卵数が減らないか
・Wトリガーには強い手応えがあるのですが、成熟卵率が低下しないか
懸念しております。もちろん、シンプルな治療で十二分な治療結果を得られることもあります。
保険診療で認められていないオプション治療との併用は当然ダメ
(採卵結果はあらゆる要素に左右されるので医学的介入(オプション治療)を行えば必ず改善するという訳ではないですが)
これは特に1回目の採卵がかなり厳しい結果であった時が辛いかなと予想します。
従来なら、そのような状況であるならば、少しでも妊娠率を上げたい!とオプション治療をはじめとする工夫を行うことで、劇的に改善、もしくはわずかだけども改善し妊娠に繋がるケースは多々あります。しかし、再度、保険診療の採卵を行う場合は、「ルールに従って大きくは変えられない治療を行うしかないので、似たような厳しい結果になってしまうかもしれない」リスクは従来より増すと予想します。
採卵回数には制限ないが、胚移植回数には制限あり採卵して凍結した胚は全て移植しなければ、次の公的保険を利用した採卵に移行できない
保険診療では胚移植回数に制限があり、40歳未満の方は6回まで、40歳以上43歳未満の方は3回までという規定です。これ自体は旧来の特定不妊治療助成事業と大差ないのですが、「採卵して凍結した胚は全て移植しなければ、次の公的保険を利用した採卵に移行できない」というのが結構大きな制限です。
これは院内掲示している説明資料・採卵開始時にお渡しする説明資料に記載がある「凍結胚の基準」にも関わってきます。胚移植は基本的にgradeの高い(妊娠率が高いと予想される)ものから移植していきます。
例えば、gradeの高めの胚盤胞3個・gradeの低めの胚盤胞3個を凍結できていた場合。
従来ならば、grade高い胚が3回難しかった場合、残り1つは残した状態で次回採卵を行い、新たな凍結胚と一緒に2個移植するなどの選択肢がありましたが、保険診療においてはgradeの低い胚が残ったとしてもそれらを全て移植しなければ、公的保険を利用した次回採卵には進めません。
(逆に言えば、残った凍結胚を放置したまま、自費診療の採卵胚移植に移行することはできます。)
違った側面からみると、1回目の採卵で40歳未満なら6個以上・40歳以上43歳未満なら3個以上の凍結胚を得られた場合、公的保険を利用した2回目の採卵はあり得ないということになります。
次の記事では、胚移植に関する制限(自費診療との併用が出来ないという点で)を書きます。