多嚢胞性卵巣(PCOS/PCOM)について
今回から数回に分けて多嚢胞性卵巣について書こうと思います。
①回目は、多嚢胞性卵巣(PCOS・PCOM)について紹介します。
「なかなか妊娠しなくて・・・。昔、多嚢胞だから妊娠しにくいと言われたあるんです・・・」と初診でおっしゃる方が結構おられます。
「多嚢胞」という言葉は安易に用いられますが、産婦人科医師でもちゃんと理解出来ていない場合が結構あります。
一般的に「多嚢胞」という場合、「多嚢胞性卵巣症候群(PCSO)」を指していることが多いと思われます。
しかし、正確には「多嚢胞性卵巣」は、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」と「多嚢胞性形態(PCOM)」という2つの病態に分けられます。
今回は、それらの定義と違いを紹介します。次回以降に、排卵障害を伴う多嚢胞性卵巣の治療戦略について紹介します(定義なんかどうでもいい!という方は次回以降だけ読んで頂ければと思います)
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の診断基準 (日本産婦人科学会):
①多嚢胞性卵巣(少なくとも片側に10個以上の卵胞)を認める
②月経異常 and/or 排卵障害を認める
③月経時のホルモン異常(LH>FSH or 男性ホルモン高値)を認める
上記の3つを全て認める場合、PCOSと診断する。
(解説)ただし、実際の診療上は、全てを満たさなくても、①②を満たすと治療(排卵誘発)は難渋する可能性が高まります。約5-8%の女性にみられる。
PCOM(多嚢胞性卵巣形態)との違い:
⇒類似病態として、PCOMという病態があります。多嚢胞卵巣は認めるが、月経異常や排卵障害が伴わない状態です。約20%の女性にみられ、病的意義はありません。
(解説)卵巣多嚢胞があるだけではPCOSではありません。PCOMの場合、月経は規則的にきて、排卵も規則的にあり、一般不妊治療として排卵誘発に難渋することはありません。
実際の外来では、「昔、多嚢胞と言われて妊娠しにくいと言われて・・・、月経は規則的にくるんです」となると、「きっとPCOMだな、そこまで排卵誘発に難渋せず治療を進められる予感がするな」となります。
一方で、「以前から多嚢胞と言われて、月経周期もバラバラで・・・」となると、「しっかりとした治療が必要となるかもしれないな」となります。
ただ最終的には、排卵誘発の治療を行ってみないと分からないので、いずれにせよ「妊活開始して半年経過すれば1度受診」して頂ければと思います。
多嚢胞性卵巣(PCOS/PCOM)の治療戦略に関しては、次回以降に紹介予定です。