慢性子宮内膜炎とは?
子宮内膜に持続的な軽度の炎症がある病態で、着床不全(や妊娠ごく初期の流産)の原因と考えられています。炎症の原因は、細菌感染だけに限らず、出産・流産、子宮内膜症などが関連しているといわれていますが、十分に解明されていません。
頻度に関しては、体外受精治療中の方の15-20%、反復着床不全の方の15-65%、反復流産の方の10-65%と様々な報告がありますが、いずれにせよ、着床不全の原因の1つとして決して無視できないものです。当院では、胚移植を2-3回行っても妊娠に至らない時や早期検査希望の方に推奨しています。
診断方法
顕微鏡による病理組織検査、子宮鏡検査、細菌培養検査などがありますが、病理組織検査が最もスタンダードであり、当院でもそれを採用しています。
慢性子宮内膜炎は、病態自体解明されていないので、検査方法もどれが正解とまでは言い切れません(近年子宮鏡検査は否定されており、原因菌が解明されていないことより細菌培養検査も不正確です)。
治療方法
抗生剤治療となります。1st lineから4th ,5th lineまでの抗生剤治療セットを用意しています。90%の方が1st lineで治癒し、95%の方が2nd lineで治癒します。
下記は「慢性子宮内膜炎は治療すべき」と結論づけたに近い論文です。
反復着床不全患者における慢性子宮内膜炎治療の効果
計796人の女性(5つの研究)を対象とした。
・慢性子宮内膜炎を治療した群は、未治療の群に比べて、妊娠成績が向上した。
継続妊娠率 6.81倍
臨床妊娠率 4.02倍
着床率 3.24倍
・慢性子宮内膜炎が治癒した場合、慢性子宮内膜炎でない方と継続妊娠率・臨床妊娠率・着床率が同等にまで改善した。
・抗生剤治療後の治癒確認をしなかった群は、続妊娠率・臨床妊娠率・着床率の改善が乏しかった。
・流産率においては各群において有意差を認めなかった。
この論文から言えることは、
・慢性子宮内膜炎は診断すべきだし、治療すべき。
・治療というのは治癒確認(治った)まで必要である。1st lineで治癒しない時は2nd line→3rd lineと治療を継続していくべき。
・流産(=不育症)とは無関係である。
(ただし、着床不全と妊娠ごく初期の流産との境界は難しい)