慢性子宮内膜炎(CE)と着床の窓の検査(ERA)に適正な実施順序は?
2021/9/9, 17, 23のブログで、慢性子宮内膜炎(以下:CE:chronic endometoritis)と着床の窓の検査(以下:ERA)の有用性に関する論文を紹介しました。
今回は、その検査順序に関する論文を紹介します(学会で筆者の発表も聞けたので、一部その情報も混在させています)。
結論を先に申し上げると
「慢性子宮内膜炎が陰性確認 or治癒状態になった後に、着床の窓の検査をすべき!」です。
慢性子宮内膜炎と着床の窓の関連性は?
慢性子宮内膜炎と着床の窓はそれぞれ着床不全原因の1つということは明らかになっていましたが、その相互性・関係性はおそらくないだろうと言われていました。しかし、この論文は数こそ多くありませんが、今までの定説を覆すレベルにインパクトのあるものだと考えるので紹介します。
(下記用語の補足)
CE陽性(CEにかかっていた)。CE治療(CEを治癒できた)。CE陰性(CEにかかっていない)。FET(凍結融解胚移植)。
ERA結果がreceptive(着床の窓にズレがなかったという結果)。
【研究デザイン】
下記の3群に分けた凍結胚移植結果を比較検討しています。
Cured CE 群:CE陽性→CE治療→ERA→FETの流れ29例
non CE 群:CE陰性→FETの27例
CE 群:ERA→CE陽性→CE治療→FETの流れ18例
少し分かりにくいかもしれませんので、グループ分けに関して説明を追加します。
Cured CE group=CE陽性&治癒してからERA後に胚移植した群
non CE group=そもそもCE陰性で胚移植した群
CE group=先にERAを実施してしまい、その後BCE陽性&治癒後に胚移植した群
【結果】
ERAでreceptiveの結果が出た確率は、Cured CE group(57.6%)・non CE group(50.0%)に比して、CE group(15.8%)と低かった。
その後の1回目の胚移植にて臨床的妊娠率は、Cured CE group(77.8%)・non CE group(51.7%)に比して、CE group(22.2%)と低かった。
更に2回目の胚移植まで含めて継続妊娠率は、Cured CE group(85.2%)・non CE group(78.3%)に比して、CE group(30.8%)と低かった。
この論文から下記が推定されます。
- CEが存在すると、ERA結果が左右されreceptiveが出にくくなる。つまりCEの存在自体が着床の窓を狂わせている可能性がある。
- 先にCE検査&治癒してからERA後に胚移植すれば、元々CEがなかった群と同等の成績となる。
- CE group(ERA→CE陽性→CE治療→FET)は間違ったERA結果に基づいてFETしている可能性があり、妊娠率が低い可能性がある。論文筆者の施設では、CE groupで妊娠していない人には再検査を推奨している。CEが治癒した後の再ERAでreceptiveに変わる症例もある。
- 先にERAをした後にCE陽性が判明するとERA再検するか非常に悩ましい状況になる(患者さんからすれば、何故先にCE検査しなかったのかという話になって当然です)。
着床不全で悩んでいる方は、「CE検査を先行し、ちゃんと治癒を確認してから、ERAを行い」それに基づいた胚移植を行うべきです。