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不妊治療のことや女性の体のお悩みについての
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PCOSの治療戦略①(フェマーラの有用性)

多嚢胞性卵巣に関して②回目は「PCOSに対するレトロゾール(フェマーラ)の有用性」について紹介します。

(前回紹介した「PCOM」に関しては排卵で難渋することがほぼありませんので、②回目以降は排卵障害を伴うPCOSの治療戦略に関して紹介していきます。)

 

PCOSの治療戦略薬は、元来以下の通りでした。

①クロミフェン(クロミッド)

②FSH製剤(連日注射)

③ドリリング(手術)

④補助的な治療として:メトホルミン(糖尿病治療薬)、ステロイド(内服薬)、柴苓湯(漢方薬)

 

しかし、単一排卵誘発を目的とする一般不妊治療では、①②では過排卵を誘発してしまい、その周期避妊せざるえないということがしばしばあります。③は手術を行うという観点からシンプルにハードルが高いです。また重度のPCOSでは①②③の治療が上手くいかないということがしばしばあります。

従来の①②③よりもPCOS治療に有効性が高いと証明されて、

海外ではPCOS治療の第一選択薬となっているのがレトロゾール(フェマーラ)です。

当院でも排卵障害の程度が強い人には積極的に使用しています。(クロミフェンでもうまくいく人には保険適応の観点からコスト的にクロミフェンを選択しがちです)

 

PCOSに対するレトロゾールの有効性(Cochrane review):出典①

方法:レトロゾールを使用した計5560名の女性を対象とした計26RCTを解析した。

結果:

出産率:レトロゾール>クロミフェン(1.64倍) 

    レトロゾール>ドリリング(1.19倍(有意差なし))

臨床的妊娠率:レトロゾール>クロミフェン(1.40倍/1.71倍=TI/IUI)

OHSS発症率:レトロゾール=ドリリング(有意差なし)

 

PCOSに対するクロミフェンとレトロゾールの有効性の比較:出典②

対象・方法:BMI<35のPCOSの女性をランダムにクロミフェン治療群とレトロゾール治療群に分けて、妊娠成立もしくは最大で6周期の治療を評価した。排卵したかの確認も黄体期のプロゲステロン値で確認した。

結果:

累積妊娠率:レトロゾール(61.2%)>クロミフェン(43.0%)

1周期あたりの妊娠率:レトロゾール(19.0%)>クロミフェン(12.0%)

排卵率:レトロゾール(75%)>クロミフェン(67%)

妊娠までに必要な期間:レトロゾール(3-5周期)>クロミフェン(4-7周期)

結論:上記の項目で全て有意差をもって、レトロゾールがクロミフェンの成績を上回っていた。

 

これらに代表される複数の研究により、海外では一般不妊治療ではクロミフェンではなく、レトロゾールが第一選択薬となっています。

ただ、日本ではまだクロミフェンが第一選択なのかと思われます。それはレトロゾールに保険適応が無いために、クロミフェンより治療費が高いことも一因と思われます。来年の保険導入に伴ってレトロゾールも保険適応になるかもしれないという噂がありますが、現実になればPCOS治療がよりスムーズになると思われます。

 

出典①:Aromatase inhibitors for subfertile women with PCOS: summary of a Cochrane review
出典②:S A Amer et al.: Double-blind randomized controlled trial of letrozole versus clomiphene citrate in subfertile women with PCOS. Hum Reprod 2017; 32: 1631-1638

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