PCOSの治療戦略②(PCOSに対するフェマーラ+クロミッド併用療法の有用性)
多嚢胞性卵巣に関して③回目は「PCOSに対するレトロゾール(フェマーラ)+クロミフェン(クロミッド)の有用性」について紹介します。
前回、PCOSに対してはクロミッド単独よりもフェマーラ単独療法の方が有用であるという論文を紹介しました。今回は、フェマーラ単独よりもフェマーラ+クロミッド併用の方がより効果的ではないかという論文です。
PCOSに対するフェマーラ単独療法とフェマーラ+クロミッド併用療法の比較
対象・方法:18-40歳のPCOSの方70名に対して、フェマーラ2.5mg or フェマーラ2.5mg+クロミッド50mgを使用し、初回治療の排卵有無を比較検討した。
結果:
フェマーラ+クロミッドの排卵率:77%(27/35)
フェマーラ単独の排卵率:43%(15/35)
(実感)
症例数が多くはありませんが、なかなかインパクトのある治療効果の差を認めます。
実際に併用治療した方が排卵率が改善する実感もあります(特に重度のPCOSが併用療法だと簡単に排卵するという人もいます)。
(個人的な感想)
今までは、クロミッド単独療法→フェマーラ単独療法でうまくいかない場合には、FSH連製剤(連日注射)を選択していました。FSH製剤は、連日注射+コストという観点からデメリットが多い治療ですが、確実性も担保できません。
「FSH製剤がうまくいかなくて、フェマーラ+クロミッドならうまくいった症例」は結構ありましたが、「フェマーラ+クロミッドがうまくいかなくて、FSH製剤ならうまくいった症例」を全く経験しないため、最近ではフェマーラ+クロミッドでうまくいかなければ、体外受精(ART)を推奨するようになりました(もちろん、FSH製剤もフェマーラ+クロミッド併用療法もどちらもうまくいかないケースもあり、それは体外受精するしかないです)。
(余談)
最新の論文というのは、興味深いものであっても、現実の実臨床にすぐに活用できることはそう多くありません。この論文は実臨床にすぐに応用できました。「最低週1篇は英論文を読んで報告するように」と指導をしてくれた恩師のおかげで出会えた論文で、2019年3月に発表されたのですが、すぐに3月4月5月と患者さんに活用していくと、目に見えて難渋するPCOSの方が減っていったので、とても思いで深い論文です。