PCOSの治療戦略③(まとめ)
多嚢胞性卵巣に関して④回目は「多嚢胞性卵巣に対する当院での治療方針(まとめ)」について説明します。今回は、全て個人的な治療方針です。平素の論文紹介などとは一線を画す記事ですので、参考程度だと思って読んで下さい。
① シクロフェニル(セキソビット)単独内服
② クロミフェン(クロミッド)単独内服
③ レトロゾール(フェマーラ)単独内服
④ フェマーラ+クロミッド併用内服
(⑤FSH製剤連日注射)
(⑥ドリリング手術)
⑦ ART(体外受精)
①セキソビットで排卵するかを診ます(PCOの程度によって排卵困難が予測される場合は省略することがあります)。月経周期が整っている方はPCOMの可能性が高いです。セキソビットは双胎リスク・過排卵リスクが低いため、セキソビットで排卵するなら、それに越したことはありません。
②③④以前のブログで紹介した通り、クロミッドよりもフェマーラの方が成績は良いです。しかし、2021/11/18現在ではフェマーラは排卵誘発における保険適応がありませんので、コストがかさみます。そのため、まずはクロミッド単独、次いでフェマーラ単独、それでもダメならフェマーラ+クロミッド併用と進めていきます。
④⑤これらの比較試験を見つけることは出来ませんでした。個人的には、④≧⑤で治療効果が高いという実感です。⑤は連日注射と身体的負担が高く、薬剤も高い上に、過排卵リスクもあるため(それなら体外受精した方が早く結果出るかともなるので)、④フェマーラ+クロミッド併用内服の登場により、あまり選択しなくなっています。
③⑥ドリリング手術はフェマーラ単独内服と効果に差がありません。薬内服と差がないのに手術しますか?というと自ずと答えは出ます。当院で勧めることはありません。
④⑦最近は、④フェマーラ+クロミッド併用内服でも難しい症例は、その他の補助的な治療をも織り交ぜながら、⑦体外受精に進むことが多いです。体外受精においてもOHSSの注意は必要ですが、単独排卵に縛られずに多数の卵胞発育させる方針となります。